カルシウムというと、骨や歯に必須の体内で最も多いミネラルで、体重の約99%が骨や歯にあることから、“骨と歯のミネラル”と一般には考えられています。不足すると骨粗鬆症や骨軟化症を引き起こすことが知られています。
それは事実なのですが、重要なのは残りの約1%で、血液や筋肉中にカルシウムイオンとして溶け込んでいます。血液中では血液凝固の作用をしていて、筋肉中では筋肉収縮をさせるミネラルとなっています。
収縮ということでは、腸壁を刺激して蠕動運動を盛んにして、便通を促進する作用があります。カルシウムの小腸からの吸収率は約30%ですが、残りの約70%は蠕動運動を起こすために使われています。吸収率が低いことにも意味があったのです。
カルシウムが不足するとイライラしやすいことが知られています。これはカルシウムが神経伝達物質であることと関係があり、一つの神経細胞から次の神経細胞に情報を伝えていくときには神経伝達物質が必要です。その神経伝達物質の一つがカルシウムなのです。
神経系の調整のほかに、細胞内外のカルシウム濃度の調整によって細胞の機能の調整、ナトリウム排泄によって血圧調整をする作用があります。
このように、カルシウムはさまざまな働きをしているのですが、カルシウムの体内の全体量は体重の2%ほどでしかありません。少ないから重要性が低いわけではなくて、少ないからこそ少しの不足でも身体に大きな影響を及ぼすことになります。
1日に600mg以上は摂取する必要があるとされるのは、体内では1日に180mgが必要であって、吸収率が約30%であることから600mg以上という摂取量が割り出されています。しかし、実際の摂取量は厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(令和元年調査)では年代によって20〜30%も不足しています。
カルシウムは小魚、干しエビ、海藻類、牛乳、乳製品などに多く含まれるものの、摂取量が少ない現状を考えると、サプリメントも必要になっています。