筋肉を増やすためのたんぱく源としては、肉は優れた食品ではあるものの、飽和脂肪酸の量が多くなっています。脂肪酸の構造をみると、鎖状につながった炭素に水素が結びついています。すべての炭素に水素が結びついたものが飽和脂肪酸で、これ以上は結びつかない飽和状態になっているので、変化しにくくなっています。
これに対して、不飽和脂肪酸は炭素の水素と結びつく部分が全部埋まっていなくて、まだ結びつくことができます。ここに結びつくのは酸素で、これが酸化です。不飽和脂肪酸が多く含まれる魚と植物油が酸化しやすいのは、その構造が関係しています。
飽和脂肪酸が全身の細胞でエネルギー化されれば問題はないのですが、多く摂りすぎて血液中に多くなると動脈硬化のリスクを高めることになります。しかし、飽和脂肪酸は肉を食べれば必ず摂ることになるので、その健康被害を減らす工夫が求められます。
どの程度の摂取がよいのかということですが、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)には三大エネルギー源の摂取割合が示されています。これは分量ではなくて、エネルギー量での割合ですが、それによると炭水化物(糖質+食物繊維)が50〜65%、たんぱく質が13〜20%、脂質が20〜30%とされています。
脂質のうち飽和脂肪酸は7%以下にすることがすすめられていて、飽和脂肪酸が1に対して、不飽和脂肪酸が3〜4の割合で摂ることがよいわけです。
不飽和脂肪酸には動脈硬化のリスクを低下させる作用があります。肉を食べたら、それと同じくらいの魚や植物油を摂ることを考えるかもしれませんが、もっと多く摂ることを心がけることです。肉類でも牛肉は飽和脂肪酸が多く、豚肉のほうが少なくなっています。鶏肉は、さらに少ないので、筋肉を増やすための肉として、鶏肉が選ばれるのには、そういった理由もあるのです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)