医療の世界では使われることが多い“手遅れ”という言葉は、発達障害児の支援では使わないようにしています。それは本人や保護者に対してのことであって、実際には改善のための支援を始める時期的なタイミングが遅れたことで、成果が出にくくなることはあります。
できることなら、もっと早く児童発達支援施設に来てほしかった、もっと早く始めていれば改善が進んだのに、ということは支援に取り組む専門家から聞かれることです。脳の発達は幼いときに急速に進むものなので、3歳児健診で発達障害が疑われ、医師によって診断されたら、すぐにも相談に来てほしいというのは専門家の願いです。
しかし、時期的な手遅れは取り戻せないというのは医学的な判断であって、これまでの経験から常識とされてきたことです。保護者に対しては、発達障害は改善できるということを伝えて、家族の協力、家庭での改善への取り組みを進めてもらうようにするのは普通のことですが、改善の支援をする専門家の意識が、実は伝えていることとは違っているということがあります。
医学的には、発達障害は程度が軽くなっていくことはあっても、障害であるので改善しないという認識で、そのことを意識したまま支援をしている例も少なくありません。それは保護者に現実を伝えることを躊躇している場合もあるのですが、逆に改善に過大な期待をしないようにという配慮の気持ちもあります。
しかし、これは今までの常識と意識の中での対応であって、解明が進んでくると、神経的には、すべての神経が充分に働いていないということがあっても、正常に働いている神経が100%機能するようにすることによって、これまでの常識を超える改善が望めるという事実があります。
その一つは誰もが当たり前のように食べて、当たり前のように摂取している栄養成分から作られる神経伝達物質です。神経伝達物質は、材料を摂取すれば体内で必要なものに変わると考えられてきたのですが、体内で多く合成されるのが実は腸内であり、腸内環境によって合成量が変わることがわかってきてから、アプローチの一つに腸の健康が加えられました。そういったことと発達支援の機能トレーニングを組み合わせた成果への挑戦は、まだ始まったばかりです。
〔発達支援推進協議会 小林正人〕