健康あない人33 メンタルは“心の免疫力”

メンタルヘルスを“心の健康”と訳して、前回は身体と心の健康が関係していることからコロナ禍で心の健康を保ちにくくなったという話をしました。

メンタルヘルスを構成する用語の“メンタル”については単に心、精神と訳すのではなくて、別の表現が必要になってきました。心の健康(メンタルヘルス)を保つことを考えて、私たちは“心の免疫力”という表現をしています。

免疫力は、わかっているようで充分には理解していない人が多かったのですが、コロナ禍を経験して、免疫力の重要性に気づいたという人も増えてきました。同じ身体、健康度であっても、免疫を司る免疫細胞の働きが弱いと、同じ感染症のウイルスが来たときに、自分だけが感染してしまうようなことになります。

基礎疾患がある人は、コロナ感染しやすく、感染したときには発症しやすい、そして重症化しやすくて後遺症も現れやすいということで、免疫を高めておくことの重要性も強く認識されるようになりました。

このことから考えると、心の免疫力を高めるためにはリスクを減らすこととともに、免疫を強化するためのテクニックも必要になります。メンタルを崩すようなストレス状態になっても、乗り越えるためのテクニックが身についていれば克服することができます。

メンタルを鍛えるには、厳しい状況に立ち向かうことが必要であるようなことも言われるのですが、その厳しい状況がメンタルを乱してしまうことにもなります。なんとか泳ぐことができる子どもをプールに投げ込んだら、その危機から逃れることができます。泳ぐことが得意の子どもなら楽しい時間になるかもしれません。

ところが、泳げない子どもを、いきなりプールに投げ入れたら溺れるだけです。そんなことを実際に経験しなくても、その危険性がある場面に直面しただけで、心の健康は大きく乱されてしまうことになります。

感染リスクが高い人に対して、通常の対策では感染させて、大きな被害を与えてしまうのと同じことで、心の健康についても心の免疫力が低い人に対して、同じ対応をしてはいけないということです。

そのことは、発達障害児の支援をする中で、充分に理解をして、適した対応をしていないために、発達障害の状態を悪くさせるようなことを気づかずにしている周囲の人をみていると、つくづく感じることです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)