代謝と糖尿病9 糖尿病と合併症の関係

「糖尿病ほど簡単な病気はない」ということは医師などが口にすることで、糖尿病治療に詳しい専門医からもよく聞かれることです。

糖尿病を簡単な病気と指摘するときに対比されているのは高血圧症です。高血圧症は原因が明確ではなくて、血圧が上昇する理由も明らかにはされていません。血圧が上昇する原因は11種類あるとされています。

それに対して糖尿病は、血糖値が一定以上に上昇することが原因で、血糖値で判断することができます。血液中のブドウ糖を減らすための方法も明らかで、食事療法、運動療法、医薬品による治療法も確立されています。発見するのも改善・治療するのも“簡単”ということになります。

それでも糖尿病の人が多いのは、治療法が長続きしないからです。というのは、糖尿病は食事療法と運動療法を実施した上で、医薬品を使うのが治療法の大原則だからです。

「糖尿病で死ぬことはない」とは、検査を受けて高血糖を指摘された人が、よく口にする言葉です。こういった感覚が、糖尿病の受診を遅らせる原因となっています。

糖尿病になったからといって、それだけで亡くなることはないものの、年間の死亡原因を見ると糖尿病は第10位前後であり、年間に1万4000人以上が亡くなっています。その多くは合併症によるものです。

糖尿病の合併症で亡くなる人の多くは腎症によるもので、これは細くて弱い細小血管がもろくなることによって起こります。高血糖状態が5~10年も続くと、細小血管が高濃度のブドウ糖にさらされ、血管細胞内にブドウ糖が多く入り込み、新陳代謝が弱まっていきます。これによって血管の弾力性が失われていくようになり、血流が大きく低下するようになります。

これは古くなったゴム管がボロボロになっていくのと似た状態であり、ボロボロになったゴム管が元には戻らないのと同じように、血管も高血糖にさらされ続けると、元には戻りにくくなるのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕