下痢の原因として注目度が高まっているのが過敏性腸症候群で、日本人の15~20%に起こっているといわれます。以前は、過敏性大腸症候群と呼ばれていましたが、大腸だけでなく小腸も含めた腸全体に関係することがわかり、過敏性腸症候群と呼ばれるようになりました。
便秘や下痢などの不調によって専門医を訪れた人の40%ほどが過敏性腸症候群と診断されています。ストレス性下痢と呼ばれることもありますが、精神的なストレスによって自律神経の調整が乱れると、大腸と直腸の間のS状結腸の収縮が低下します。大腸では水分を吸収して、適度な硬さの便にしているわけですが、S状結腸の収縮が低下すると、まだ水分が多いままで便が通過して下痢になります。
下痢になると腸内細菌の善玉菌も悪玉菌も多くが排泄されます。悪玉菌は増殖しやすいため、善玉菌が減った状態で悪玉菌が増えて腸内細菌のバランスが乱れます。悪玉菌は腐敗を起こして有害物質を作り出しますが、有害物質は早く排泄されたほうがよいため、下痢が収まったようでも再び下痢を起こすようになります。過敏性腸症候群では、下痢のあとに便秘が起こることがあります。これは悪玉菌の増殖によって便の量が少なくなり、硬くなるために起こっています。
飲酒をした翌日は軟便になったり、下痢になることがあります。これはアルコールによって腸内の浸透圧が高まり、腸壁から水分が充分には吸収されにくくなり、腸内の水分が増えることによって便が軟らかくなりすぎるために起こることです。これは浸透圧性下痢とも呼ばれます。