細胞の中にあるミトコンドリアでは、エネルギー源(ブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸)を原材料としてエネルギー産生が行われています。エネルギー産生はミトコンドリアのTCA回路で酸素を使って行われると一般には紹介されていますが、実際にはミトコンドリアの中でTCA回路を使わなくてもエネルギー産生は起こっています。
ただ、その産生量は少なくて、ブドウ糖1分子から2分子のATP(アデノシン三リン酸)が発生するだけです。それに対してTCA回路を経ると、ブドウ糖1分子から36分子のATPが作り出されます。脂肪酸は、ブドウ糖に比べてエネルギー量が多いので(ブドウ糖1gが約4kcal、脂肪酸1gが約9kcal)、それだけ多くのATPを発生させることができます。
TCA回路でエネルギー物質のATPが作られているといっても、何もないところから、いきなりATPが発生しているわけではありません。ATPはアデノシンという化合物に3つのリン酸が結びついた形をしていて、ADP(アデノシン二リン酸)にリン酸が1つ結びついて作られます。
TCA回路で起こっている複雑な生化学反応は、ADPにリン酸を1つ結合させて、ATPにしているだけです。そして、ATPからリン酸が1個離れるときに約8kcalのエネルギーが発生します。また、ADPからリン酸が1個離れてAMP(アデノシン一リン酸)になるときにも8〜10kcalのエネルギーが発生します。
わずか8kcalであっても、ミトコンドリアは1つの細胞には平均すると300個ほどとされていて、ブドウ糖も脂肪酸もミトコンドリアの中に次々と入ってくるので、たった1回だけでも2400kcalになります。
全身の細胞は60兆個以上とされているので、膨大な量のエネルギーが発生しているはずですが、そんなにも多くのエネルギーが体内で使われていないのは、エネルギーを作り出すためにもエネルギーが使われているからです。
このメカニズムは非常に複雑なので、これから徐々に明らかにしていくことにします。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)