代謝と糖尿病22 糖化と老化のメカニズム

体内でアミノ酸とブドウ糖が結合すると褐色の色素が発生する糖化反応が起こります。糖化反応は、フランスの科学者メイラードがアミノ酸と還元糖を加熱することによって褐色の色素が生成されることを発見したことからメイラード反応とも呼ばれます。

1912年に発見されて以来、糖化反応は食品の加熱中に起こる着色、香りや風味の変化、栄養低下に関わることから、食品科学の世界で注目され、研究されてきました。

1960年代になって、体内でも糖化反応が起こることが発見され、その代表的なものとしてヘモグロビンA1cが注目されました。

赤血球の中にあるヘモグロビンは肺で酸素を結合させて全身に運び、末端で酸素の結合を解き、二酸化炭素を結合して肺まで運び去る働きをしています。しかし、ヘモグロビンA1cとなると、酸素を結合しても、結合を解くことができなくなります。ヘモグロビンA1cの数が増えるほど、赤血球によって全身に運ばれる酸素の量が少なくなることになります。

糖化反応による変化はそれだけでなく、細胞の老化現象、血管の老化による動脈硬化や高血圧の誘引にもなることが知られ、生活習慣病対策とともに美容業界でも注目されています。

糖化した体内のタンパク質は、ブドウ糖や果糖などの還元糖と結合して糖化蛋白が生成され、反応が進むと蛋白糖化最終生成物のAGEs(advanced glycation end products)が生成されます。AGEsは組織に沈着して皮膚や組織の炎症を引き起こすようになります。

皮膚では、糖化反応によってAGEs化したコラーゲンは皮膚の張りや弾力性の低下によってシワを作るだけでなく、黄ばみ、シミなどの原因になり、皮膚の老化を促進させます。皮膚の弾力性はAGEsが増えるほど低下し、紫外線を浴びるほど弾力性の低下が進んでいきます。

AGEsが細胞の受容体に結合すると活性酸素が発生します。糖化による変化は酸化によって加速することになり、健康のためには抗糖化対応とともに、抗酸化対応も必要になります。

AGEsが発生する原因としては、血液中のブドウ糖の量の増加のほかに、果糖の過剰摂取、高中性脂肪、アルコール摂取過剰、喫煙、睡眠不足が促進するものとしてあげられます。また、糖化反応は卵巣機能にも影響を与え、生理不順や不妊の原因の一つともされています。

血糖値、中性脂肪値、LDLコレステロール値が適正な状態になることでAGEsの生成を減らすことが可能であり、生活習慣病の予防にもつながるエネルギー代謝の向上は全身の健康を保つ基本となることが理解できます。

細胞内のブドウ糖が多くなりすぎると、ブドウ糖がミトコンドリアに反応して、TCA回路の反応を低下させ、代謝によるエネルギーの生成も低下させます。この生成の低下は、TCA回路での代謝を不完全燃焼状態にして、それが活性酸素を多くさせる原因ともなっています。

糖化反応によるAGEsの生成を抑え、体内からの排出を進める酵素があります。この酵素の活性は加齢とともに低下していきます。酵素の活性を高める方法は現状ではないため、体内のブドウ糖を減らし、血糖値を安定させることが、糖化反応を抑制する最良の方法となります。

アルコールは体内でアセトアルデヒドに分解されると、糖化反応を進めてAGEsを増やすことが知られています。そのためアルコール飲料の摂取量を減らすことも糖化対策には必要になります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕