発達障害の特性は千差万別で、これが正解と言いにくいことから、改善のためのアプローチも難しくなっています。発達障害の子どもに対して実施してきたことで成果があったからといって、それを押し付けようとする向きもあるのですが、実例としてあげたことが千差万別の一つで、それをアドバイスする相手も千差万別であったとするとマッチする確率は極めて低いことになります。
栄養面でのアプローチなら、生命維持や発育の基本中の基本であるので、多くの人に通じるはずと考えられます。それを期待して、エネルギー代謝を高め、自律神経を調整して、神経伝達物質を多く作り出すという方法を紹介しています。
これなら必ず結果が出そうに思えるものの、期待どおりにならないことも少なくありません。それは栄養を受け入れ、体内で有効に活用する仕組みによるからです。
この栄養素が不足しているから補えばよいというのは普通の感覚ですが、どれくらい不足しているのかによって摂取すべき量が違ってきます。たった1種類のビタミンが不足しているために状態がよくないということなら、サプリメントで補うことができるのでしょうが、1種類の食品が食べられないということでも複数の栄養素が不足します。
その不足の状態も、摂取した栄養素の量だけで決まるわけではなくて、体内での消費量の差によっても異なる結果となります。
すべての子どもが同じ身体の状態であれば、摂取すべき量を推測することも可能です。ところが、発達障害では脳の発達の凹凸のために、機能にも凹凸があって、必要となる栄養素の量にも違いがあります。
発達障害では神経伝達物質のセロトニンが不足しているための自律神経の調整が乱れていることが確認されているので、体内でセロトニンを合成するための材料を摂って、合成を進めるようにすればよいと一般には考えられています。
しかし、もともとセロトニンの量の違いがあり、セロトニンを活用して神経伝達を進めていく脳神経細胞の機能にも差があることから、「これだけのことをすれば大丈夫」といえないのが発達障害を改善するための栄養支援の難しいところなのです。
決めつけるのではなく、さまざまな手法を繰り出して、反応を見ながら調整するという、まるで東洋医学の対応にも似たようなことが求められるのです。
〔発達栄養指南:小林正人〕