憮然(ぶぜん)というのは意外なことに驚くことを指している言葉ですが、「憮然として立ち去る」というように使われることから、不快感を抱いた様子を指すように思われがちです。意外なことに驚くというのは、何も不快感を抱くだけではなくて、驚きのあまり呆然とするという状況もあります。
驚きのあまり失望するという意味もあって、これは不快感と似たような感覚かもしれませんが、実際の憮然の意味は驚きや失望、落胆のために、ぼんやりする、呆然とするというものです。
文化庁の「国語に関する世論調査」の結果では、「腹を立てている様子」という誤用のほうが70%を超えていて、正しい使い方の「失望してぼんやりとしている様子」のほうは20%にも達していませんでした。
この結果から、「憮然」という言葉を使うときには、周囲の人が、どちらの意味で使っているのかを確認しておかないと、思わぬ結果になることもあります。
健康に関わる話をしていて、これまでの常識と違うことを聞いて、「目から鱗が落ちた」ということで真剣に聞き、真剣に考え直してもらえればよいのですが、不快だから立ち去るという人も少なからずいます。これまでの自分の常識が誤っていたことに耐えられずに、それこそ立ち去る人もいるのですが、そういう不快感を抱く人は少数派のはずです。
少数派であっても、社会的な立場が高くて、評価もされている人の行動は、それが正しいと見られてしまうこともあります。こと健康に関わることは、自分の常識と違うということに腹を立てるのではなく、常識のほうを変えてほしいところですが、そうはいかないという人が、なぜか健康づくりのリーダーをしていることがあり、他の人を迷わせることも起こっているのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕