これをすれば必ずよくなると言えれば、多くの人の信用が得られるところでしょうが、発達障害は個人差が大きく、同じ状態であったとしても各人の感覚の違いが影響してくるので、絶対に大丈夫ということが言えない難しさ(もどかしさ)があります。
それは栄養摂取という毎日の実践でも同じことで、不足している栄養素がわかり、それを補ったからといって、すぐに結果が現れないことは普通にあることです。前日はよい結果だったのに、今日は違っているということもあって、それは栄養摂取が栄養しているのかと疑問を抱かれることもあります。
前回は神経伝達物質のセロトニンについて触れましたが、セロトニンは材料である必須アミノ酸のトリプトファンを摂っていれば、脳内で多く作られるわけではありません。体内の合成量としては腸内が90%ほどを占めています。そのために、腸内環境を整えることが重要ということで、そのために摂取すべきもの、環境を整えるための生活法などが広まってきています。
ところが、セロトニンについて書かれている書籍を見ると、脳で合成されると書かれています。脳なのか腸なのかの議論も起こるところですが、腸内で多くが合成されているのは事実です。しかし、セロトニンは脳細胞に余計なものを通過させないための血液脳関門を通過することはできません。
トリプトファンか、そこからセロトニンに変化する途中の状態(前駆物質)でないと血液脳関門は通過できないのです。だから、腸で多く作られるのも正解であり、脳で合成されるのも正解ということになります。
セロトニンが同じように作られたとしても、それを消費する人の必要量や疲労度によって、足りているのか、それとももっと必要なのかは違ってくるので、これだけの条件を整えれば大丈夫と言えないのが難しいところではあります。
〔発達栄養指南:小林正人〕