「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」では、「母乳育児もバランスのよい食生活のなかで」と示されています。
授乳中には、エネルギー源、たんぱく質、ビタミンA、ビタミンB₁、ビタミンB₂、ナイアシン、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、葉酸、ビタミンC、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレン、モリブデンを妊娠前より多く摂取することが推奨されています。付加量を充分に摂取できるように、バランスよく、しっかり食事を摂ることが大切です。また、充分な水分摂取も母乳分泌には大切です。
一般的に、母乳栄養は子どもにとっても母体にとっても負担の少ない授乳方法です。また、母乳栄養生授乳することは、妊娠中に増加した母体の体重や蓄積した脂肪の減少につながります。
そのため、WHO(世界保健機関)では生後6か月までの完全母乳育児を推奨しています。ただし、さまざまな要因で母乳栄養の実施が困難な場合もあるので、状況に応じて柔軟に対応する必要があります。
授乳婦の栄養素などの平均摂取量は、エネルギー源やたんぱく質をはじめ、多くのビタミンやミネラルでも少ない状況にあります。子どものアレルギー疾患予防のために、母親の食事は特定の食品を極端に避けたり、過剰に摂取する必要はありません。バランスのよい食事が重要となります。
日本人は海藻を食べるため、他国の人よりも多くのヨウ素を摂取しています。ヨウ素は母乳に移行するため、授乳中は妊娠前よりも多くのヨウ素の摂取が必要になります。しかし、過剰に摂ると、母乳中のヨウ素濃度が極端に高くなり、乳児の甲状腺機能に影響を与える可能性があるので、摂りすぎには注意することが大切です。
一方で、海藻の摂取を意図的に避け続けると、ヨウ素不足につながります。身体によいからといって、特定の食品ばかりを食べ続けたり、逆に身体に悪いからといって避け続けたりすると、必要な栄養素を適切に摂取することが難しくなります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕