鮭の英語名はサーモン(Salmon)です。だから、サーモンと書かれていたら、これは英語の呼び方であって同じものと考えられていた時期があります。これは日米の違いというようなことではなくて、日本の市場では鮭とサーモンは別のものとなっています。
鮭は加熱して食べるものとされています。天然物には寄生虫のアニサキスがいるからです。アニサキスは鮭のエサのオキアミに寄生して、これを食べることで鮭に寄生します。養殖物の場合にはエサにアニサキスが寄生することがないので、寄生虫の心配がなくて、生で食べることができます。天然物と養殖物を区別するために、天然物は鮭、養殖物はサーモンと呼ばれました。
ここまで読むと鮭とサーモンは同じもので、エサが違うだけと思われるかもしれませんが、国内で流通しているサーモンの多くは鮭とは違った種類の魚です。
鮭は分類ではサケ目サケ科サケ属のサケです。一般に市販されているサーモンはサケ目サケ科サケ属までは一緒なのですが、正式名称は“トラウトサーモン”(trout salmon)で、一般にはマス(鱒)と呼ばれるものです。寿司屋で出されるサーモンの多くはトラウトサーモンで、これを略してサーモンと呼んでいるだけです。
ちなみに、ロサンゼルス・エンゼルスのマイク・トラウトの苗字も“trout”と書かれます。
鮭の卵はイクラです。イクラと書かれていたら鮭の卵と思いがちですが、マス(つまりトラウトサーモン)の卵もイクラです。イクラの語源はロシア語の卵で、ロシア語では“ikra”と表記されます。広辞苑などの辞書にはイクラは「サケ・マスの卵を塩漬けした食品」と書かれています。
意味的にはマスの卵もイクラで間違いではないのですが、鮭のイクラは粒が大きく、価格も高いのに対して、マスのイクラは粒が小さく、価格も安くなっています。色もマスのほうが薄いのですが、これはアスタキサンチンを使うことで補正できます。アスタキサンチンは鮭のエサのオキアミの赤い色のもとの色素で、オキアミが食べる藻が材料となっています。
この藻から作ったアスタキサンチンをマスのイクラに使うことで、鮭のイクラと同じ色にすることが可能です。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)