牛乳に対してアレルギー反応がある子どもの場合には、完全に摂取をやめるのではなくて、少しの量からでも摂取して状態をみながら増やしていくということがすすめられます。これは食物エレルギーで実施されている方法ですが、発達障害児の極端な偏食についても栄養摂取の観点から少量からの摂取がすすめられることがあります。
それは正しい方法なのか、それについて考えていくことにします。
食物アレルギーの場合には、閾値(状態が出る限界値)を超えるとアレルギー反応が起こることがわかると、閾値の範囲内で摂取するようにします。閾値が低すぎる場合には、アレルギー反応が起こっても、ひどい状態でなければ成長や免疫の強化のために摂取することがすすめられます。
牛乳のアレルギーは、たんぱく質のカゼインが原因物質とされます。カゼインは加熱しても変化しないため、牛乳を飲むとアレルギーが起こりやすくなります。どこまでの量なら飲んだほうがよいのかは、医師に相談して決めることになります。
これに対して発達障害の極端な偏食については、少量ずつ増やしていくことで飲める量を見極めるということが難しいことがあります。牛乳に限ったことではないのですが、飲めないのは好き嫌いが原因でもなく、アレルギー反応のように生理的に受けつけないということでもありません。
五感(味覚、聴覚、視覚、嗅覚、触覚)の過敏によって、刺激が強く感じて食べられない、飲めないということのほかに、以前に経験した出来事の記憶が消えずに生理的に受けつけないということもあります。
こういった場合には、なぜ飲めないのか、急に飲めなくなったのか、その理由を聞き出して、理由と意味を確認してから与えることが重要になります。健康のために、成長のために必要であるとして、発達障害を改善するために少しでも飲ませようとすることは、子どもにとっては拷問をされるように捉えられることもあります。
誤った対応が、その子どもに必要なものを生涯にわたって摂れなくなってしまうことがないように、慎重に対応する必要があるのです。
〔発達栄養指南:小林正人〕