発達栄養94 早食いは何が悪いのかを知ってからの指導

早食いをする子どもは、それなりの理由があります。味わって食べることを学んでいなくて、ただ食べればよいと考えている(もしくは教えられてきた)子どもはいるものの、それは少数派です。中には、親に急かされて、早く食べることしか教えられていないという子どももいるのですが、それも少数派です。

家では、食事を作るのも大変で、食べたあとの片付けにも時間がかかるからと、掻き込むように食べさせられている例もあります。それは家庭の中でのことで、家族から離れた学校給食では普通の速度で食べているということがあります。

家庭では急いで食べなければならないためにスプーンしか使ったことがなくて、スプーンで食べられるような軟らかい料理しか食べたことがないので、それ以外の料理では時間がかかり、このことが逆に学校などではゆっくりと食べることにつながっているという、あまり望ましくはない理由もあります。

早食いになってしまうのは、早く食べ終えて、そのあとに好きなことをしたいという理由もあれば、他の人と一緒に食事をするのが苦手だから早く済ませようという場合もあります。これは大人であっても同じことで、ゆっくりと食事をすることの大切さがわかっていないために起こることです。

早食いすると消化によくないというのは、大人が子どもによく言うことですが、子どもは消化液の分泌がよいので、早食いをしたからといっても消化力が大きく下がるようなことはあまりありません。ただ早く食べるから悪いというのではなく、興奮して食べることが問題です。

発達障害がある人の多くは、神経伝達物質のセロトニンの分泌量が少なくて、自律神経の副交感神経の働きが低下しやすくなっています。セロトニンが少ないと、興奮作用があるドーパミンやアドレナリンによって交感神経の働きが高まってしまいます。

副交感神経の働きが盛んになると唾液や胃液の分泌、小腸での吸収、血液中に栄養素が入ってからの循環、全身の細胞への取り込みや細胞内の代謝、そして排泄の機能までが高まるようになります。それとは逆に交感神経が高まりっぱなしになると、すべての機能が低下して、食事に関わる機能が低下することになるのです。