エネルギー代謝62 機能回復のエネルギーその1

加齢や疾病によって低下した全身の機能を正常に保つためには、全身の細胞の中で作り出されるエネルギーの量を一定に保つことが必要です。しかし、医薬品の使用によってはエネルギー量を減らす結果になるものもあります。その例としてあげられるのはエネルギー産生のTCA回路の最後の仕上げであるコエンザイムQ10の産生を低下させるスタチン剤です。

スタチン剤はコレステロールの体内合成を抑えることによって動脈硬化を予防するために使われる医薬品です。血液中のコレステロールのうち80%ほどは肝臓で合成されていて、食事に由来しているものは20%ほどです。コレステロールは全身の細胞膜の材料で、ホルモンは胆汁酸の原料になっているので、健康維持には欠かせないものです。

しかし、コレステロールの合成量が増えると、悪玉コレステロールとも呼ばれるLDL(低比重リポたんぱく)が増えて、動脈硬化のリスクを高めることになります。LDLが増えると活性酸素によってLDLが酸化するようになり、酸化したLDLは血管壁に取り込まれて活動を停止します。これが続くと、動脈が厚く、硬くなる動脈硬化へと進むようになります。

LDLの酸化による動脈硬化を予防するために、コレステロールの肝臓での合成を抑えるためにスタチン剤が使われます。スタチン剤はコレステロールの合成を30〜50%も抑えることができるものの、その結果として全身の細胞内のエネルギーを発生させるための補酵素であるコエンザイムQ10の合成も抑えられてしまいます。

どうして、そのようなことになるのかというと、コレステロールが合成される仕組みとコエンザイムQ10が合成される仕組みの経路が途中まで一緒で、コレステロールの合成を抑えるとコエンザイムQ10の材料が減ってしまうからです。コエンザイムQ10が不足したのでは、全身の細胞の働きを高めて活動や生命維持のためのエネルギーが充分に作り出せなくなるので、健康を基本的に害することにつながるのです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)