発達支援推進43 歯科治療での発達障害への対応

発達障害がある人は、感覚過敏に加えて、人とのコミュニケーションが苦手なこともあって、顔の近くで刺激的なことが起こると、恐怖を感じて強い拒否反応を起こすことがあります。その一つが先端(尖端)恐怖症で、先が尖った針、刃物、ハサミ、鉛筆などが視界に入ると恐怖や不安を感じる状態を指します。

発達障害ではハサミが怖いためにヘアカットができないということがあります。髪を伸び放題にして、たまにカットしてもらう、それも美容院や理容院にいくのではなく、信用のおける人(保護者など)にカットしてもらうしかないということも少なくありません。

ヘアカットでも恐怖症が起こるようであると、歯科治療の恐怖は激しいものがあり、まるで拷問のように感じることさえあります。歯科治療を受けたことがある人なら、歯科治療に特有の触覚、視覚、聴覚、嗅覚、味覚を刺激することを思い浮かべることがあるかと思います。その苦しさは治療によって異なってきますが、発達障害の自閉症スペクトラム障害に多くみられる五感の感覚過敏があると苦しいことばかりです。

自閉症スペクトラム障害は好き嫌いの感覚が激しくて、誰しも好きとは言えない歯科治療を避けよう、その場から逃げたいという感覚が強いだけに、その子どもを座らせて、治療することには歯科医は相当の苦労をしています。

注意欠陥・多動性障害の子どもは、そもそも動かないでいることが苦手で、嫌だと思うこと、じっとしていることを強要されるのは逃げ出したい気持ち、そこに行かない、歯科医院に向かう前に家庭や学校から脱走して予約の時間に来ないということもあります。

「虫歯の痛みが続くよりも痛さを我慢するのは短い時間だけだから」、「歯の痛みのために大事な栄養が摂れなくなるから」という説得をする保護者もいます。それがわかってくれる子どもであればよいものの、嫌なことを強要する保護者のことが嫌いになる、嫌がることをしようとする歯科医が嫌いになって、治療に断固として行かないということも起こっているのです。

歯科治療が必要な発達障害児に対して、どのような理解をすればよいのか、どのように対処すればよいのかということを歯科医療に関わる方には、発達障害に詳しい専門家とともに、一緒に考え、対応策を一緒に考えるようにしていくことが必要と認識しています。
〔発達支援推進協議会 小林正人〕