母子の栄養15 完全栄養の意味

“完全栄養”という言葉があります。その食品に含まれている栄養素だけを摂っていれば生きていける食品を指しているのですが、人間にとって、そのような便利な食品は存在していません。猿から進化してピテカントロプス(ジャワ原人または直立原人)になったときに、食べられるものの種類が変わって、完全栄養の食品はなくなりました。

動物は一定の食品を食べるだけでも生命維持をすることができますが、人間は何でも食べなければ生きていけない“雑食”になりました。猿と人間に共通しているのは体内でビタミンCが合成できないことです。人間は他の水溶性と脂溶性のビタミンも合成できないのですが、他の動物は生命維持に必要なビタミンを合成することができます。

人間が食品から摂らなければならない必須ビタミンは13種類あります。水溶性ビタミンのビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、ビタミンC、ナイアシン。パントテン酸、葉酸、ビオチンの9種類と、脂溶性ビタミンのビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの4種類です。

必須ミネラルはカルシウム、リン、カリウム、イオウ、塩素、ナトリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、クロム、ヨウ素、セレン、モリブデン、コバルトの16種類です。

完全栄養というと卵によく使われる言葉です。卵は生命の源で、鶏卵の場合には、ひよこが生まれるまでに必要な栄養素がすべて含まれている、という意味で使われています。しかし、その実際の意味は、たんぱく質を構成するアミノ酸が全部含まれているということです。人間に必要なアミノ酸は20種類あります。

そのうち体内では合成されない9種類が必須アミノ酸(トリプトファン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン)です。必須アミノ酸がバランスよく含まれている食品としては卵のほかに肉、魚、牛乳があげられます。

体内では合成されない脂肪酸は必須脂肪酸といい、リノール酸とα‐リノレン酸があげられます。リノール酸はサフラワー油(紅花油)、コーン油、大豆油に多く含まれています。α‐リノレン酸はエゴマ油、シソ油、アマニ油(亜麻仁油)に多く含まれます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕