ぜんざいといえば小豆を甘く煮た日本伝統の甘味で、漢字では善哉と書かれます。ぜんざいは江戸時代に食文化が関西から伝わってきたことから、元素は京都のはずです。東京からみて、各県民の食文化の違いを驚きの目で見るという人気番組があるので、どうしても東京中心に考えがちですが、長年暮らした東京から離れて、岡山に移住してみて、違っているのは東京のほうということが案外と多いことに気づきました。
幼いときに人が新潟県の寺院で暮らしていたので、ぜんざいは当たり前のおやつでした。餡そのもの(粒あん)を食べたり、餅と一緒に食べる汁気のないものというのが常識でした。東京と新潟は同じ関東文化圏なので、子どものときから親しんだ粒あんのぜんざいを楽しむことができました。
東京にいたときから毎年のように出雲大社に参拝していたことから、出雲のぜんざいは知っていました。11月の神無月は、出雲では全国から神様が集まるので神在月と呼ばれていて、このときに食べる小豆雑煮が“神在餅(じんざいもち)”と呼ばれて、これが転じてぜんざいとなったというのは出雲地方の公式見解となっています。実際に食べてみたら、粒あんの汁粉で、関東のぜんざいとは違っていました。
妻の出身地の京都では、ぜんざいはこしあんのおしるこ(汁粉)です。同じこしあんでも汁気のないものもあって、これは汁粉ではなくて、亀山や小倉と呼ばれています。中には粒あんを使ったぜんざいもあって、文化の混ざり合いを感じています。
粒あんの汁粉を“田舎汁粉”と呼んでいる店もあって、1000年の歴史がある食文化の中心であった京都から見たら粒あんは田舎臭いもの、それを好んで食べていたのは田舎者という扱いなのかと感じて、京都に行ったときだけはこしあんを楽しむことにしています。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)