2023/5/3 1日1万歩の根拠

岡山市南倫理法人会の水曜日恒例のモーニングセミナーは連休中のために、本日はお休みです。先週の講話をうかがっているときに思い出したことがあり、備忘録的に書き残しておくことにしました。

講話のテーマは「一十百千万の実践」でしたが、この中で気になったのは自分の専門の健康分野のウォーキングに関わる“万”についてです。ウォーキングで万といえば1日1万歩が定番ですが、1万歩が言われるようになったのは前の東京オリンピック(1964年)に高まった健康づくりの気運から“万歩運動”が始まりました。

その根拠となっているのは、当時は栄養過多、運動不足から1日に300kcalほどのエネルギー過剰になっていました。この分を歩くことで消費するには3000歩ほどのウォーキングが必要で、当時は平均で7000歩ほどだったことから、1000歩が100kcalとしてプラス3000歩の1万歩が目標として掲げられました。

これに合わせるように万歩計が発売されました。万歩計の商標を持っているのは山佐時計計器で、これ以外の会社は歩数計と称しています。この1万歩の経緯を知っているのは、東京に住んでいたときに、公益財団日本健康スポーツ連盟の理事として、日本ウオーキング協会(ウオーキングは同協会の固有名詞)の指導をしていたときに長老から聞かされていたからです。

1万歩というのは高齢者には適していないと言われています。その根拠となっているのは中之条研究の成果で、群馬県中之条町で実施された65歳以上の全住民である約5000人(重度の認知症や寝たきりの人を除く)を対象に歩数計を装着して、平成12年(2000年)から15年以上にわたって実施されている健康研究です。その後追い研究は今も続けられています。

研究の結果、高齢者の歩数としては1日に8000歩以上歩くこと、そのうち中強度の歩行を20分間以上取り入れることが提言されています。中強度の歩行は、なんとか会話ができる程度の速歩きを指しています。

この場合の歩行数は、ウォーキングに費やす歩数ではなく、1日の日常活動の中での歩行数で、8000歩の歩行の場合にはウォーキングによる歩行数は5000歩を想定しています。20分間の中強度の速歩では2000歩ほどの歩数となることから、ウォーキングは無理のない範囲での速歩となります。

ウォーキングは有酸素運動によって全身の血流が促進され、脳の血流が高まることが知られています。アルツハイマー病発症に対する危険因子で最も影響度が高いのは「身体的不活動」、いわゆる運動不足で、うつや肥満、喫煙を大きく上回っています。中之条研究では、1日に7000歩以上、中強度活動時間15分以上のグループでは認知症がいなかったとの報告もされています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕