メディカルダイエットというと、消化・吸収・循環(血液循環)・代謝(細胞での生化学反応)・排泄の一連の流れにアプローチすることが多いことから、食道から先のことを扱っていると考えられがちです。その範囲の研究と講習が多いのも事実ですが、食べたものを噛んで、しっかりと消化しやすい形にしてから飲み込むという食道を通過する前のことも扱っています。
消化から先の科学的な反応と比べると、食事と運動のタイミングといったような生化学の研究よりも簡単な分野を扱うことにはなりますが、食事をしてからエネルギーを作り出し、そのエネルギーを使って健康を維持するためには、初めの噛むことが重要になります。
噛んでから飲み込むまでのことは“咀嚼”(そしゃく)と呼ばれます。食べ物を噛み砕いて、唾液と混ぜ合わせ、柔らかくて飲み込みやすい形にすることを指していますが、咀嚼の基本となるのは噛むことです。噛むことによって唾液が分泌されるので、噛む回数は大切になります。
咀嚼の回数としては一口について30回が目安とされます。現代の咀嚼の回数は1日あたり620回とされています。戦前の1420回に比べると半分以下になっています。これは食べ物の硬さとも関係があって、あまり噛まなくてもよい食品を食べるようになった結果ともいえます。
噛む回数が少なくなったということは、噛んでいる時間も短くなっているわけで、戦前は22分だったのが現在では11分と半分になっています。それだけ唾液が出なくなっているわけで、消化のために胃から分泌される消化液が多く必要になっています。
噛む回数と飲み込むタイミングを教えられていない幼い子どもでも平均して15回は噛んでから飲み込んでいます。そのときよりも硬いものを食べている成人は、30回は噛んでもおかしくないわけですが。10回ほどで飲み込んでいる人も少なくありません。
咀嚼は前歯(門歯)を使って粗く噛んでから、奥歯(臼歯)ですり潰していきます。粗く噛むのに7回、それ以降はすり潰しの回数となります。10回で飲み込んでいたら、まだ吸収されにくい形のままで胃に送られていくので、消化が進みにくくなり、栄養素の吸収にも、栄養素を用いた代謝にも影響が出てくるのは当たり前のことです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)