健康食品は、あくまで食品であるので、医薬品とバッティングすることはない、という考えは長らく医学や医薬の世界にはありました。それは今から20年以上前のことで、それこそ“機能性食品”ではなく“気のせい食品”と揶揄されるような時代のことです。
ところが、健康食品の使われる素材の研究が薬学の世界で拍車がかかり、医薬品と同様の作用機序(効果的に働くメカニズム)がわかり、より効果が高いものも明らかにされるようになりました。
素材の種類、産地、収穫時期、収穫方法、使用部位、効果的な加工(抽出、凝縮など)による違いが明らかになるにつれて、医薬品とのバッティングが起こるようになってきました。
バッティングというと効果がかち合うことから、思いもしなかった結果が現れることで、一般的には、よくないこと、医薬品でいえば副作用のようなことが想像されます。
しかし、よいこともあって、これは“相互作用”と呼ばれます。例えば、血圧を降下させる成分が含まれる医薬品があって、健康食品でも血圧を降下させるものがあって、両方を同時に使うと血圧が下がりすぎることがあります。そのため、健康食品を使わないように患者に指導する医師もいます。これは日本の医師の基本的なスタンスです。
ところが、アメリカでは別の考え方が主流で、患者本人の意思で健康食品を使って血圧を下げようとして、それで充分な効果が得られなかったときには、医薬品を少しだけ使うということをします。これはアメリカの医療制度が定額払い制度で、どんな方法で治療しても受け取ることができる医療費が同じという仕組みが関係しています。
これは健康食品にも機能性が認められているからで、それだけに食品の成分であっても凝縮、濃縮されたものは医薬品の組み合わせと同様に相互作用が起こる可能性が高いという認識があるからです。
この医薬品と健康食品成分の相互作用をまとめた世界データベースの「ナチュラルメディシン・データベース」(natural medicine database)がアメリカを初めとした英語圏で使われています。この日本対応版もあり、1200種類以上の素材が掲載されているうちの25%ほどには健康被害が認められた相互作用がある医薬品が示されています。
そのようなリスクがあるにも関わらず、相互作用が起こるような健康食品の成分が使われ、患者が使って疾病の治療効果があるということを表示して販売したら、何があったときに厳しく対処されるのは当然のことです。というのは、規制する側は「ナチュラルメディシン・データベース日本対応版」を熟知しているからです。
それだけに、販売する側も、この内容を知っておくべきだということで、入手方法と使い方をコンサルタント先には伝えています。
〔健康情報流通コンサルタント 小林正人〕