地域の活性には、「まずは知ってもらい、来てもらい、ファンになってリピートしてもらう」ということが言われます。これは広告代理店も、旅行代理店も、地域の企画会社も常々、口にしていることで、それだけ地域の活性を願う(担う)自治体や、そこに関係する団体(観光協会、商工会など)が望んでいることです。
そして、望みを叶えるために、お金を出しやすいキーワードでもあります。地域活性の会議のときに、「またか!」と嫌気が生じるほど見聞きしたものです。
そのキーワードの「まずは知ってもらい、来てもらい、ファンになってリピートしてもらう」は、今では広告代理店、旅行代理店の稼ぎに使われるだけで、実際には地域の利益になっていないと感じていることですが、そのことを初めて知ったのは、長野県の安曇のPRのイベントに“一旅行者”として参加したときでした。
東京の両国駅から特別列車を仕立てた格安ツアーがあり、家族で参加しました。最初はJRか旅行代理店の企画かと思っていたのですが、車内で仕切り役をしていたのが知り合いの広告代理店のプロデューサーであったことから、すぐに仕掛けに気づきました。
世話係の若手は大学の観光学科の学生で、受け入れ側の自治体も含めて安上がりを目指していたことにも簡単に気づきました。
駅から現地に向かうバスの中で、ツアーの注意点の説明があり、「安曇野と言わないでください。これから向かうのは安曇村で、安曇野とは違います」ということでした。
安曇村は長野県中部に、かつてあった北アルプス南部の観光地の一部です。2005年に合併によって松本市に合併されたので、この話も随分と前のことになります。
これに対して安曇野は、旧5町村の広域名称のことで、今では安曇野市となっています。観光ブランドとしても安曇野は有名で、安曇村と説明されても、つい安曇野と口をついて出てしまいます。
今では安曇村は松本市の一部となり、ブランド化を進めることに広告代理店と旅行代理店の指導(口車?)を受けて頑張ってきたのですが、“松本市安曇”となってから、独自のキャンペーンもできなくなり、広告代理店も手を出さなくなっています。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)