年齢を重ねると神経伝達の速度が遅くなるのは、神経伝達物質によるバトンタッチに時間がかかるようになるからです。神経伝達は刺激を助けると一瞬にして伝わって、遠く離れたところ(指先から脳など)でも、すぐに反応が起こります。
まるで電気が流れるように、あっという間もなく伝わっていくのですが、実際には神経細胞は細胞という名からわかるように細胞の中を伝わって、隣の神経細胞に伝わっていきます。長い繊維状の細胞ですが、それぞれの神経細胞の間にはシナプスと呼ばれる隙間があって、その間は神経伝達物質が流れています。
神経細胞が受けた情報が神経細胞の端までくると、その情報が神経伝達物質の種類や数に変換されて、神経伝達物質を受けた神経細胞が情報に変換して、次々と伝えていきます。
神経伝達物質は伝えられただけでなく、元の神経細胞に戻されていきます。この戻る量が加齢によって減っていくことから、徐々にではあっても神経伝達物質が減って、それが神経伝達の速度を遅くさせることになります。
神経伝達物質は20種類ほどあるとされています。促進に働くものと抑制に働くものがあり、前者はドーパミンやアドレナリン、後者はセロトニン、GABA(γ-アミノ酪酸)が代表的なものです。
高齢になると不足するのはセロトニンやGABAで、ドーパミンやアドレナリンは加齢によってもほとんど変化しません。セロトニンなどは抑制系であることから自律神経の副交感神経の働きを盛んにします。これとは逆に交感神経の働きを盛んにするのはドーパミンやアドレナリンです。
高齢になると興奮しにくくなるような印象が抱かれがちですが、実際には副交感神経の働きが低下して、そのために興奮しやすくなり、この状態を抑えにくくなっていきます。セロトニンもGABAもアミノ酸から体内で合成されます。
ドーパミンやアドレナリンもアミノ酸から合成されますが、アミノ酸が不足すると体内合成も減少します。高齢になるとアミノ酸が含まれるたんぱく質の摂取が減ることも神経伝達に影響を与えることになります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕