消化作用のある酵素は、野菜、果物、穀類、発酵食品、生の動物性食品などに多く含まれています。しかし、食品に含まれる栄養素は品種改良や収穫時期の変化、農薬や化学肥料の使用による土壌の劣化などによって低下傾向があり、特に野菜に含まれる消化酵素は減少しています。
日本人の健康は、長い歴史の中で穀類や野菜、魚類を多く摂ってきたという土台があり、これだけでは不足する栄養成分を補うことで作り上げられてきました。不足しているものは、食品を多く食べて補えばよい、というのは当たり前の発想ですが、食品に含まれる栄養成分が低下している時代には、摂取量を増やすだけでは補えない実態があります。
有機・無農薬での栽培が一般的であった時代には栄養が豊富であったことから、農薬も化学肥料も使わずに栽培すれば栄養成分も消化酵素も豊富な野菜が栽培できる、と考える人も少なくありません。しかし、品種改良で以前の種類と異なるものが主流となっているものも多いのが実態です。
消化酵素が多い食品としてはジアスターゼが豊富な大根があげられます。ジアスターゼは唾液に含まれるアミロースと同じ糖質の消化酵素です。大根といえば以前は中央が膨らんでいる三浦大根が主流でしたが、今の主流は細長い形状の青首大根です。辛味が減り、甘味が増えた分だけ、ジアスターゼの量も減っています。
青首大根の青首の部分は地面から出て日光が当たっているところで、この部分が、だんだんと長くなる傾向があります。まっすぐの大根は箱に入れて運びやすく、大量に運べるうえに売りやすいメリットがあるからです。そのため、箱のサイズに合った均一の長さで出荷できるようになった反面、完全に成長する前に抜いたり、栄養のピークを過ぎても箱のサイズに合う長さになるまで抜かないようにしたりと、栄養よりもサイズが優先されるようにもなりました。そのために、消化酵素が、ますます減るようになりました。
野菜のミネラルは、土の中から根によって吸い上げられ、野菜の中に蓄えられていきますが、ミネラルが豊富な肥料を使えば、そのまま野菜に入っていくわけではありません。根の周りにあるミネラルは、土壌の微生物の働きによってイオン化してから根に取り込まれていきます。化学肥料や農薬が使われた土壌は微生物が少なく、イオン化しにくいためにミネラルが根に入りにくくなっているのです。
人間の身体は有害成分が入ってくると、ビタミンやミネラルを使って有害成分を分解、無毒化させています。植物も同じようにビタミンやミネラルを使って有害物質を分解しています。野菜や穀類などにとって農薬や化学肥料のほかに環境を汚染させるダイオキシンや水銀、塩素などの工業化学物質も分解すべきものであり、これらが野菜などに含まれるビタミンとミネラルとともに消化酵素を減らす結果となっています。
酵素はタンパク質であるため、加熱すると破壊されて活性が低下することになります。体内の酵素はアミノ酸から合成されているため、空腹期間が長い就寝時に徐々に減少していき、起床時には大きく減少しています。朝食では必須アミノ酸が豊富に含まれる良質のたんぱく質を摂ることが大切となります。良質なたんぱく質に該当する食品は、肉類、魚類、卵類、大豆・大豆加工食品があげられます。