噛む噛むeverybody6 血糖値の上昇抑制

よく噛んで唾液を多く分泌させることは、血糖値を上昇させる、太る原因になる、というように言われることがあります。唾液に含まれる消化酵素のアミラーゼは、糖質の澱粉(でんぷん)を分解して麦芽糖に変化させます。麦芽糖は小腸壁にある消化酵素のマルターゼによってブドウ糖に分解されて吸収されます。

澱粉はブドウ糖が10個以上結びついたもので、麦芽糖はブドウ糖が2個結びついた構造をしています。澱粉はα–グルコシダーゼという分解酵素によってブドウ糖に分解する作用があります。

ブドウ糖は血糖値を上昇させるのは、よく知られていることです。血糖は血液中のブドウ糖のことで、血糖値はブドウ糖の量を示した値です。ブドウ糖が多く吸収されると血糖値が上昇するわけですが、よく噛んだからといって血糖値が急上昇するようなことはありません。

あまり噛まなかったことで唾液の分泌量が少ないとしても、α–グルコシダーゼが働くので、血糖値は上昇していきます。噛まないことで血糖値の上昇を抑えることはできないということです。

むしろ噛む回数を増やすと血糖値の上昇を抑制することが判明しています。よく噛むと脳の視床下部からヒスタミンが分泌され、満腹中枢に働きかけ、食欲が抑制されます。血糖値の急上昇は満腹中枢の働きが弱いために、食べ過ぎてしまうことが原因です。

ヒスタミンには、自律神経の交感神経の働きを盛んにする作用があります。交感神経系が働くとエネルギー源として蓄えられていた内臓脂肪の中の中性脂肪が脂肪酸に分解されます。その脂肪酸をエネルギー化させるのは細胞のミトコンドリアで、ミトコンドリアでのエネルギー代謝を促進する作用もヒスタミンにはあります。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕