血糖値は血液中のブドウ糖の量の指標で、血糖値が高いということは、本来なら全身の細胞に取り込まれるはずだったブドウ糖が充分に取り込まれていない結果と言えます。ブドウ糖の取り込みには膵臓から分泌されるホルモンのインスリンが必要となり、その不足によって細胞への取り込みが低下します。
運動をするとインスリンが不足している状態でも、細胞にブドウ糖を取り込む役割をするGLUT4というグルコース(ブドウ糖)輸送体が細胞の奥から細胞膜に移動して取り込みが始まります。ブドウ糖は細胞に取り込まれると即座にエネルギー化される特徴があるために、ウォーキングのような有酸素運動によって血糖値が下がっていきます。
GLUT4を働かせているのはAMPキナーゼ(アデノシン一リン酸キナーゼ)という酵素です。運動を始めて細胞の中ではエネルギー不足の状態になると、これを解消するために、できるだけ多くのエネルギーを作り出そうとして細胞のミトコンドリアの中でATP(アデノシン三リン酸)がリンを2個外してAMP(アデノシン一リン酸)に変化してエネルギーが作り出されます。
細胞内にAMPが多くなると、エネルギーの枯渇状態を感知してAMPキナーゼが活性化します。
ATP系のエネルギー消費は10秒間ほどで終わり、そのあとは乳酸系と呼ばれる無酸素状態でブドウ糖を主にエネルギーとして使う運動となりますが、乳酸系運動は10分ほどしか続かず、そのあとも運動を続けると、有酸素系と呼ばれる脂肪とブドウ糖をエネルギーとして使うエネルギー代謝へと切り換わっていきます。
ウォーキングを始めたときには、平常時に比べると多くのエネルギーを、すぐに作らなければならないので、代謝しやすいブドウ糖が先に使われます。ブドウ糖が中心になって代謝するのは10分間ほどです。そのため、血糖値を下げるためには、10分間のウォーキングを何度か繰り返す方法がすすめられます。
血糖値が高いことを指摘されて、運動をするように言われると、以前に運動をしていた人は、その運動を再開させたり、走ったりしがちです。しかし、血糖値が高めの人に激しい運動は禁物です。
心拍数が高まりすぎる運動は、心臓や血管の負担が大きくなります。血糖値が高い状態が続いていると血管の細胞が傷みやすくなり、強い負担がかかるようになっています。その状態での激しい運動は血管を傷つけて合併症のきっかけとなることも考えられます。歩くことは血管にダメージを与えない運動という意味でもすすめられています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕