健康づくりの基本中の基本は、すべての栄養素が摂取できるように、食べ物を口の中に入れ、よく噛んで、飲み込むまでの過程となります。栄養摂取ではスタートラインに当たるのが歯科の分野です。
食べ物を噛むことは、細かく砕いて飲み込みやすくする、消化液としての唾液を多く分泌させると同時に、唾液に含まれる成分による抗菌作用、歯や口腔内を清潔にする効果、顔の筋肉や骨の強化、免疫の向上や認知機能の維持・向上、活性酸素消去など、多くの健康づくりの基本的な動作となります。
また、噛む回数を増やすことによって、満腹中枢が働きやすくなって食べ過ぎを抑えるという抗肥満(ダイエット)効果や味覚の発達、食感の向上など、美味しく食べて、適正な体重を保つという効果も確認されています。
歯と口腔の健康状態を保ち、正常な咀嚼と嚥下ができるようにすることは、胃での消化も助け、小腸からの吸収、大腸の蠕動運動による排泄という、生きていくための基本的な身体活動の基本中の基本となります。
健康づくりのための歯科健診は子どものときには実施が必須となっていますが、働く世代になると実施が義務づけられているのは定期健康診断だけで、これには歯科健診は含まれていません。歯科健診は危険性の高い職種では義務づけられているものの、それ以外はオプションとなっているのがほとんどです。
歯と口腔の健康状態が優れていることは、全身の健康と関わりが深いだけに、学習能力や作業効率などにも大きな影響を与えています。歯と口腔の健康は、仕事の効率を高めて生産性を向上させるだけでなく、歯と口腔の健康が保たれるような職場環境は働きやすい条件の一つとして、離職率を低く抑えることにも貢献します。
歯と口腔の健康を把握して、それに一般的な健康診断の結果を加えることは、従業員の健康状況を予測して、より働きやすい条件を与えることにもなるだけに、健康経営の基本ともなります。従業員の健康は企業や団体の健康度にもつながります。
健康デザインを実施するときには、歯科健診を採用して、これを健康づくりの基本の一つとすることを、健康経営を目指す企業・団体に提案していくべきことだと強く認識しています。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕