歯の健康状態が保たれていると、心身の健康度も高まり、それが仕事の効率を高めることは以前から言われてきたことで、多くの事業所や研究者によって調査や分析が進められてきました。
歯と口腔の健康状態については、これまでは働き盛りの状態が高齢になったときの口腔の状態に影響を与えることが重要と考えられてきました。しかし、一般の労働者については歯科健診が義務化されていないこともあり、口腔保健が重視されてこなかったのは事実です。また、事業者によっては、口腔の健康が退職後の口腔の健康に影響を与えるという研究結果は、歯科健診を積極的に導入することに結びつかないのは仕方がないことではありました。
産業保健分野では、働く人の健康状態が労働生産性に影響を与えることは以前から知られてきたことで、その中に歯科健診を取り入れることの必要性も検討されるようになってきました。
一般の疾病では発症や治療のための欠勤、遅刻、早退は労働生産性を低下させる要因となっていましたが、最近では欠勤などには現れない疾病による仕事のパフォーマンスや集中力の低下の方が、むしろ労働生産性に大きく影響することがわかってきました。
しかし、口腔の健康状態と労働生産性の関連については、まだ研究途中であり、これからの分野とされてきたところがあります。
この口腔の健康状態と労働生産性との関連について研究発表した安達奈穂子医学博士(東京医科歯科大学助教)は、歯科の健康が全身の健康に影響することを裏付けることに取り組み、口腔の健康状態のうち、どれが大きな影響を与えるのかを明らかにしようとして、歯周病、う蝕(虫歯)、う蝕を経験した歯の数、口腔関連QOLと労働生産性に関連の調査に取り組みました。
その結果については、次回(健康デザイン10)で紹介します。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕