厚生労働省の「健康日本21」では、歯・口腔の健康について目標を定めて健康づくりを推進しています。その現状と目標から歯の喪失の防止について3歳児のう蝕に関するリスク因子を紹介します。
1)間食としての甘味食品・飲料の摂取回数
甘味食品・飲料の摂取頻度がう蝕の発病に強く関わっていることは、国内の多くの疫学調査や長期間の介入研究によって立証されています。
特に砂糖については、口腔内細菌によって菌体表面で不溶性グルカンを合成する際の基質となるなど、他の糖質よりもう蝕の誘発に深く関与していることが明らかにされています。
このため、甘味食品・飲料の摂取回数が多くなるほど、う蝕の発病リスクは高くなりますが、幼児の健全な発育の観点から、1日2回程度の間食習慣は広く普及しています。ここでは1日3回以上の摂取を高頻度群ととらえて、リスク低減の目標と位置づけることとして、間食内容を工夫して、時間を決めて飲食する習慣を普及していく必要があります。
併せて、甘味料のうち、う蝕誘発性の低い甘味料に関する正確な知識を普及していくことも求められています。
2)フッ化物歯面塗布
フッ化物歯面塗布を伴う定期歯科健康診査・保健指導による事業の効果について、その有効性が報告されています。
これらの報告では、フッ化物歯面塗布によるう蝕抑制効果と健診・保健指導による効果が必ずしも分離できていない面がありますが、フッ化物歯面塗布にはほとんどの場合、保健指導も伴うと考えられるため、塗布経験者率を評価指標としても、報告されている成果が得られるものと考えられます。
また、フッ化物歯面塗布の回数に応じて、う蝕抑制効果の上昇が認められるため、乳歯の萌出状況にあわせ、適宜塗布を受けることことが推奨されます。
なお、1歳6か月児歯科健康診査では、う蝕罹患傾向の高いもの(O2型)をスクリーニングすることとなっており、O2型と判定された者などのハイリスク者を特に重点的に指導することが効果的です。
3)その他(授乳習慣、仕上げ磨きなど)
リスク因子として示されている1歳6か月をすぎての就寝児の授乳など、う蝕の原因となる授乳習慣を改善することや、毎日保護者が仕上げ磨きをする習慣の徹底なども重要となります。
併せて、保護者が自らの早期治療や定期的な歯科健康診査の受診を心がけるなど、保護者自身の歯科保健行動の向上も必要とされています。
◎乳幼児のう蝕予防の目標
・3歳児におけるう蝕のない者の割合の増加
目標値:80%以上
・3歳までにフッ化物歯面塗布を受けたことのある者の割合の増加
目標値:50%以上
・間食として甘味食品・飲料を1日3回以上飲食する習慣を持つ者の割合の減少
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕