健康スポーツ1 スポーツは勝つことが目的なのか

スポーツというと勝ち負けを競うものというイメージがあります。勝ち負けがつく競技スポーツは勝たなければ意味がない、勝つために苦しい練習をこなすのは当たり前、優勝こそがスポーツの最大の喜びということはスポーツに参加する者に常に言われ続けてきました。

しかし、その意識を変える一つのきっかけとなったのはクーベルタン男爵が語ったオリンピック精神を表す「勝つことでなく、参加することに意義がある」という有名なフレーズです。

このフレーズは1908年のオリンピック・ロンドン大会の演説で、IOC(国際オリンピック委員会)のピエール・ド・クーベルタン会長が述べた言葉として伝えられています。クーベルタン男爵はフランスの貴族で、「L’important,c’est de participer」と述べたのですが、これが英訳されて「The importance of these Orympiads is not so much to win ,as to take part」と伝えられました。

「participer」も「take part」も参加と訳されることから、「参加することに意義がある」とされたのですが、共有するという意味もあります。このことから「オリンピックは勝つことでなく、共有することに意義がある」が正しい意味合いだと考えられます。

文部科学省の外局のスポーツ庁はスポーツ基本計画を設けていますが、第二期スポーツ基本の計画では「スポーツは身体を動かすという人間の本源的な欲求に応え、精神的充足をもたらすもの」と定義されています。

これに従うと、競技スポーツだけでなく、体操や散歩、ウォーキング、ハイキング、海水浴などもスポーツの範疇となります。自由に楽しむことがスポーツという感覚ですが、さらに“する”だけでなく、“見る”ことも“支える”こともスポーツという感覚になります。

“スポーツ”に関わって自由に楽しむことすべてがスポーツという感覚ですが、スポーツ(sports)の語源はラテン語の「deportare」で、「運び去る、運搬する」の意味があり、そこから転じて「義務からの気分転換」「日々の生活から離れる」「元気の回復」といった意味で使われるようになりました。

これこそがスポーツの本質で、健康的で生き生きとした人生を送るために、勝利を追求することも、自由に身体を動かすことも、自由に観戦して楽しむことも、スポーツが実施されるように参加・支援することも、すべてがスポーツと言えます。

このような考え方を表すために、「健康スポーツ」という用語を用いて、健康づくりに取り組むことの大切さを訴えていくシリーズにしたいと考えています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕