発達栄養118 咀嚼が影響する聴覚過敏

発達障害に特徴的に見られる感覚過敏は、味覚、嗅覚、聴覚、触覚、視覚といった五感が鋭く反応するために、さまざまな生活の困難さを生じさせる原因となっています。特に日々の生活の中で直接的に影響を受けるのは食べることに関わることです。

聴覚過敏は、定型発達であれば不快な音であっても耐えられないことはないという音であっても、聴覚を鋭く刺激して逃げ出さなければならない状態にもなります。外からの音であれば、それを避ける環境を選択することで改善できたとしても、学校などの集団生活の中で、同じタイミングで食事をする場所の音が強い刺激になっているから、別の環境で食べたいと言ってもかなえられないことがあります。

これも周囲の理解があれば解決できることかもしれませんが、自分の歯で食品を噛むことによる音が聴覚を鋭く刺激すると感じている子どもにとっては、どうにも避けることができません。

聴覚過敏によって周囲の音が気になって集中できない、そのような環境では食べることができないということについては、それでも理解しようとする教師などがいれば、他の人にはわからないことであっても、なんとか改善に向けて進むことはできます。

ところが、聴覚過敏によって食品を噛む音が苦しいと感じていることは、なかなか理解されず、噛む音を弱められる軟らかい食品にしてほしい、噛まずに飲み込める料理にしてほしいという希望を伝えても、これもかなえられることは今の状況では難しいことです。

そんな状態に苦しんでいるのに、咀嚼は大事であり、しっかりと噛んで食べることが推奨されていることを掲げて、強要されることは、もっと苦しさを強めることになります。噛むことによるストレスで、かえって消化、吸収に悪影響が出ること、つまりストレスによって自律神経の副交感神経の働きが低下して、消化、吸収、さらに腸の蠕動運動までに影響が出ることを理解して、咀嚼に対する指導を検討してほしいのです。