咀嚼は、すべての歯を使って、しっかりと噛んで、飲み込みやすい状態にすることを指しています。前歯(門歯)で粗く噛んで、奥歯(臼歯)で充分にすり潰すことが大切です。犬歯は牙のような形状の歯で、これは肉や魚を噛みちぎる役目となっています。
噛むことによって顔の筋肉が刺激され、噛んだときの唾液やホルモンなどが多く分泌されるようになるのですが、その噛む刺激を強く感じて、噛むことが苦痛になることもあります。これは歯科治療が必要になっている場合だけではありません。
普通に噛むことだけでも、非常に強い刺激に感じて、噛むことに抵抗感があり、さらには硬い食品を食べることができないということも起こります。これは発達障害の特性の一つの感覚過敏が原因で、触覚の感覚過敏が大きく影響する子どもも少なくありません。
噛むことの重要性を伝える教育や指導の中で、噛む回数を多くするというよりも、多く噛まないと飲み込みやすい状態にならない食物繊維が多い食品を食べるように言われます。食物繊維は腸壁を刺激して腸の蠕動運動を促すとともに、大腸では腸内細菌の善玉菌の栄養源となって分解されるので、善玉菌を増やして便通をよくすることにも役立ちます。
発達障害は自律神経の副交感神経の働きが弱いという特性があります。唾液や胃液の消化液の分泌も小腸からの吸収も便通も副交感神経が促進しています。その働きが弱いだけに、本来なら食物繊維が多い根菜類などを食べてほしいところですが、触覚過敏によって噛むことが困難になると調理の工夫が必要です。
それは食物繊維が多いものは細かくカットする、煮て軟らかにするといったことですが、噛むことが強い刺激にならないように食事の後にガムを噛むといったことが必要になることもあります。
こういったことまで考えて、触覚過敏がある子どもには対処してほしいのです。