歯科健診によって歯の健康を守ることは、全身の健康を守ることにつながります。歯が少ないと咀嚼が困難になるために、食べられるものが限られ、バランスよく栄養を摂取することができなくなります。
健康状態が保たれていない歯は、生活習慣病の原因にもなります。
また、噛む回数は記憶力、認知症と相関があるとの研究結果から、かかりつけの歯科医院がないことが認知症の発症リスクを増加させることも指摘されています。
歯周病は歯を失う原因の第1位(37%)ですが、歯周病罹患率は15〜24歳で20%、25〜34歳で40%、35〜44歳で40%、45〜54歳で50%、55歳以上は55〜60%となっています。
歯が失われることによって全身に影響が出るだけでなく、菌が血管内に侵入することで脳卒中、心筋梗塞、高血圧、認知症、骨粗鬆症、関節リウマチ、妊娠合併症などを悪化させる可能性があります。
歯科健診による働く人の健康の維持・増進は、労働生産性を向上させると同時に、それは離職率を低下させることが期待されます。
歯科健診の重要性を広く伝え、企業・団体において継続的に実施できるように相談・講習・実施支援などを行うことが重要となってきます。
歯の健康状態が保たれていると、心身の健康度も高まり、それが仕事の効率を高めることは以前から言われてきたことで、多くの事業所や研究者によって調査や分析が進められてきました。
歯と口腔の健康状態については、これまでは働き盛りの状態が高齢になったときの口腔の状態に影響を与えることが重要と考えられてきました。事業者によっては、口腔の健康が退職後の口腔の健康に影響を与えるという研究結果は、歯科健診を積極的に導入することに結びつきにくいことでした。
産業保健分野では、働く人の健康状態が労働生産性に影響を与えることは以前から知られてきたことで、その中に歯科健診を取り入れることの必要性も検討されるようになってきました。
一般の疾病では発症や治療のための欠勤、遅刻、早退は労働生産性を低下させる要因となっていましたが、最近では欠勤などには現れない疾病による仕事のパフォーマンスや集中力の低下のほうが、むしろ労働生産性に大きく影響することがわかってきました。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕