噛むことと味覚、嗅覚、聴覚、触覚との関わりは理解しやすいかもしれませんが、視覚との関係となるとわかりにくいところがあります。発達障害に多く見られる視覚障害は、光を強く感じて見えにくい、視力に問題がないのに文字が歪んだり、一部の色が刺激的に感じるといったことが起こります。
この視覚過敏は文字が見えにくいことから判別がつきにくくて、理解に時間がかかり、文字を書くことにも時間がかかるということが起こり、学習障害にもつながっていきます。
噛むことは視覚過敏には直接的な影響はなくても、視覚情報に過敏であると目で見たものの記憶が強く残りやすくなります。五感による情報のうち、83%は視覚情報であるとされています。
目で見たものは記憶に残りやすく、その記憶が食の困難さに関わることであった場合には、視覚で得た情報が食べたいという気持ちを妨げたり、噛むことによって記憶が蘇ることにもなります。
食べ物が合わなくて、また発熱などがあって、食べたものを戻したことがあると、食べたものが噛み砕かれ、飲み込みやすくなった状態のものが戻されることから、噛むことが戻したものの状態を思い出させることにもなります。
発達障害がある子どもは、記憶として画像が残りやすく、その画像記憶が消えにくいことがあります。特に視覚過敏の子どもは、戻したもののイメージが強く残りために、ただよく噛むように言ったり、噛むことの大切さを教えるだけでは噛むことへの抵抗感は弱まってくれません。
本人の体験だけでなく、兄弟姉妹や学校などの友達が戻したときの体験も画像記憶として残って、それが噛んで飲み込むことへの抵抗感を強めることにもあるので、その点も注意して咀嚼について考える必要があります。