噛む噛むeverybody36 義歯・ブリッジで抑えられる高齢者の体重減少

歯の健康は身体の健康に大きく影響するというのは、いくつかの要因がありますが、死亡リスクを上昇させることは以前から言われてきたことです。歯を失うことは噛む機能を大きく低下させます。

全体の歯の32本のうちの1本だけの喪失であっても、噛む機能は32分の1の影響では済みません。噛むことは、歯の全体のバランスによって行っていますが、歯は噛み切る、粗く噛む、すり潰すという機能の違いがあることから、機能低下は10%単位で低下すると考えられています。

失われた歯を義歯(入れ歯)やブリッジで補うことで口腔機能を回復させることができますが、栄養摂取について、どの程度の影響があるのかについては、あまり明らかにされてこなかったところがあります。

その臨床試験として実施したのは東北大学で、要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者を対象とした10%以上の体重減少の有無の追跡研究でした。10%以上の体重減少は高齢者の低栄養状態の指標として海外で報告されているものです。

対象者は5万3690人で、3年間の追跡期間中に10%以上体重減少が減少した人は5.8%でした。また、残存歯数が20本以上の人で10%以上体重が減少した人は4.3%でしたが、19本以下の人では6.8%となっていました。

これを因果媒介分析した結果、残存歯数が19本以下の人の10%以上の体重減少のリスクは、義歯・ブリッジを使っていない場合は約1.41倍、義歯・ブリッジを使っている場合は1.26倍となっていて、残存歯数が19本以下の人でも義歯・ブリッジを使っている人では体重減少のリスクが約37.3%減少することが明らかとなりました。

歯の本数が10〜19本の人では、義歯・ブリッジを使っている場合の体重減少のリスクが1.08倍と残存歯数が20本以上の人と統計学的に有意な差は見られませんでした。

残存歯数が少ない人でも、義歯・ブリッジを使用することによって、体重減少のリスクを大幅に低下させることができて、これが高齢者の健康の維持につながることが確認されたということです。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕