エネルギー代謝94 糖尿病対策の運動

エネルギー代謝の促進が最も活かされる生活習慣病は糖尿病の予防と改善といえます。糖尿病は血糖値(血液中のブドウ糖の割合を示す値)が高くなりすぎて、細胞のエネルギー代謝が低下するために血管の新陳代謝が低下して、血管の老化が進んでいく疾患です。

血液中のブドウ糖(血糖)は、細胞に取り込まれてエネルギー化されますが、多くのブドウ糖が取り込まれるのは筋肉の細胞です。筋肉の細胞にブドウ糖が多く取り込まれると、細胞内のミトコンドリアで優先的にエネルギー化されます。

生命維持のための基礎代謝のうち筋肉の消費エネルギーの割合は、一般には35〜38%とされています。基礎代謝は全体の消費エネルギーのうち約70%を占めているので、全体の24〜27%を筋肉が使っていることになります。

そのため、筋肉が多い人はエネルギーが多く使われ、ブドウ糖の消費も進んでいきます。また、筋肉量が多くなくても、筋肉を使う時間を長くすることによって血糖値を下げることができるようになります。

糖質を多く摂ることで血糖値が上がりやすく、糖質を制限すると血糖値が下がりやすくなることから、糖尿病になると食事による糖質の摂取量を減らすか、糖質からブドウ糖に分解される胃で分泌される酵素の働きを抑える医薬品が使われます。

糖尿病の治療は、本来なら食事療法で血糖値を下げるようにして、それで効果は得にくい場合には運動療法が行われます。これでも血糖値が下がりにくい場合に医薬品が使われるのが原則です。

その運動療法としてすすめられるのはウォーキングなどの有酸素運動ですが、糖尿病では筋肉のエネルギー代謝が低下していることが多いため、筋肉量を増やす無酸素運動もすすめられます。歩くことで筋肉も強化できる早歩きは無酸素運動まではいかなくても、無酸素領域に近づくことで筋肉強化の効果もあり、少なくとも筋肉を減らさない効果を得ることが可能です。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)