肌とストレス10 ストレスとホルモン分泌の関係

ストレスが強まるとホルモン分泌にも影響が出てきます。このことが肌荒れとも密接に関係しています。特に女性は、周期的なリズムで繰り返される女性ホルモン分泌の影響を受けやすく、ストレスが生理周期を乱すということは、すでに知っていることかと思います。

ホルモンは非常に少ないもので、血液中のホルモン量は50mプール1杯に対してスプーン1杯ほどの割合です。そんなにも少ない量で働いているだけに、少しの変化でも身体に大きな影響を与えることになります。

女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)があります。このうち肌に特に影響を与えているのはエストロゲンです。

エストロゲンは生殖器官を成長させ、維持させる働きがあるホルモンで、排卵期に多く分泌されるようになります。生理前にはエストロゲンが減って、代わりにプロゲステロンの分泌が多くなっていきます。

エストロゲンには肌の水分と脂質を保持して肌のバリア機能を強化して、角質を柔らかくして、肌の保水力を高める作用があります。この肌に大切な役目をしているエストロゲンが減ると肌が乾燥しやすくなり、角質が固くなっていきます。

ストレスによってエストロゲンの分泌が減ると肌荒れが起こりやすくなるわけですが、ストレスが肌に与える影響は、これだけではありません。

ストレスが強まると、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが多く分泌されるようになります。コルチゾールは副腎皮質から分泌されていて、肝臓で糖を作り出したり、脂肪の分解などの働きがあります。これはプラスの面ですが、マイナスの面としては肌のバリア低下、肌の乾燥、コラーゲン量の減少などがあげられます。

コルチゾールには線維芽細胞の細胞骨格を乱す作用があることもわかっています。線維芽細胞は皮膚の真皮にある細胞で、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸といった美肌のための成分を作り出しています。線維芽細胞は分裂が早くて、分裂周期が早ければ新たな線維芽細胞が効率よく美肌成分を作ってくれます。

細胞骨格というと固いものといった印象があるかもしれませんが、柔軟性があるのに、しっかりと結合しているという特徴があります。ネックレスにたとえると、糸が通されている真珠を一方に押しつけると固く結合されたようになり、糸をゆるめると自由に曲がることを想像してみるとわかりやすいかもしれません。

細胞骨格は細胞の形を維持して、細胞の機能を正常に保つ機能があるのですが、線維芽細胞の細胞骨格が乱れると細胞内での物質の輸送や情報伝達が正常に行われなくなり、細胞の基本的な機能が低下するようになります。

コルチゾールが線維芽細胞に作用すると、細胞骨格が太く、線維質になります。そのときには肌の赤みやごわつきが起こるようになります。

コルチゾールには線維芽細胞の神経細胞を刺激する作用があるため、このことが肌の赤みやごわつきを起こすと考えられています。しかも、徐々に起こるのではなくて、コルチゾールが血液中に増えると急に神経が刺激されることから、強いストレスを受けたときに、急に肌荒れが起こることにもなるということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕