タクティシャン9 健康づくりの戦略と戦術

健康診断には個人で受けるものと事業所単位で受けるものがあり、後者は法定健診と呼ばれています。法定健診を受けた結果は、事業所のものでもあり、個人のものでもあるという考え方をされます。

事業所のものというのは、健診の費用を企業や団体が負担したからということだけでなく、事業所の中の健康づくり、健康な社員による健全な企業などの運営にとっても重要なデータであり、これを生かすことが事業所の将来の活動になって重要な役割を果たしているからです。

社員の健康づくりを企業の資産と同様の考え方をして、企業の強みの一つにしていこうという取り組みは“健康経営”と呼ばれています。これを一歩進めて、“健康戦略”にまで高めようという企業も増えてきています。

実際に健康診断の結果を、病気にならないで働くための指標とするのではなく、業績の向上や離職率の低下に結びつけていこうという戦略的な経営も注目されています。健診結果を活かした企業の健康づくりを戦略として捉え、そこで働く人の健康づくりを戦術として進めていくことによって、戦いに勝ち抜く集団にするのもタクティシャン(戦略・戦術参謀)の役割です。

疲れ切った軍隊では、どんなに優れた戦う力があっても発揮することができなくなります。体力と気力が充実した状態が保持されてこそ、企業の理念に沿った戦略を順調に進めることができます。そういった意味では健康戦略が企業の戦略の基礎となるということが言えます。

企業が戦いを挑む相手は、ライバル会社だけでなく、社員の健康を蝕む病気であり、健康を弱めるような生活習慣です。それとの戦いを、経営側や上司から言われて取り組むのではなくて、個人が健康リテラシー(健康に関わる情報を的確に得て実践する能力)を高めて、さらにモチベーションを高めたまま臨めるようにする環境づくりも重要な企業戦略となっていくと認識しています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕