“体質”は便利な言葉です。健康や医療の世界では、不調の原因がわからないときに、精密検査をして原因を追求することもなく、詳細な問診(聞き取り)をすることもしないで、“体質”のせいにすることがあります。
「あなたは冷え体質だから身体を温めるものを食べるように」とか「身体を冷やさないように」と医師などの専門家から指摘されて、それぞれの専門家が得意分野の治療や療法などを実施してきます。体質の改善ということで、病名も告げられないまま治療薬を出されたという例もあります。
患者に告げないだけで、医薬品の処方には病名を書き入れなければいけないので、そこには「体質」ではなく、それなりの病名が書かれます。中には「病名が明らかではないので、とりあえず」と言って書き入れる医師がいるのも事実です。
体質は、「遺伝的素因と環境要因との相互作用によって形成されるもの」であるので、悪いことばかりではないのですが、「体質だから仕方がない」といった感じで悪いことを示すときに使われることが多いことから、あまりよい印象の言葉ではないと感じる人もいます。
体質についてのコラムの連載を始めることを親しい医師に伝えたときにも、「イメージのよくないことを書くのか」と言われました。その医師には、20年前にメディカルダイエットの研究を始めたときにも「ダイエットという言葉にはよくない印象がある」と言われたことを思い出しました。
確かに医療の専門家からは、虚弱体質、アレルギー体質、特異体質、風邪をひきやすい体質といったマイナスイメージの言葉がよく聞かれます。医療の世界のイメージが引きずられていて、他の世界でも腐敗体質、隠蔽(いんぺい)体質、金権体質、談合体質といったように悪いことのイメージで使われています。
そして、よくなるために“体質改善”がすすめられるわけですが、これも悪いことを抑えていくというスタンスで、よい体質を高めていこうということを、あまり見聞きしたことがありません。
「体質との調和」というテーマは、悪いことに合わせるという意味ではなくて、よい体質とすること、持って生まれた体質を活かしていくというスタンスで書き進めていきます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕