子供は味覚が単調で、成長するにつれて複雑な味も判別できるようになります。甘いものは重要なエネルギー源であるので、これを積極的に食べられるように幼いときには甘い味に敏感に反応します。味覚というと甘味、塩味、旨味、酸味、苦味の五味が基本となっています。甘味は糖質、塩味はミネラル、旨味はたんぱく質の味で、酸味は本来では腐ったものの味、苦味は毒物の味です。酸味と苦味は大人になってからおいしく感じる味です。今では五味に“脂味”が加わって六味と呼ばれるようになっています。
子供のときには脂味に反応しにくく、脂っこい味をおいしく感じることは少ないはずです。しかし、今時の子供はマグロをおいしく食べ、「中トロよりも大トロのほうがうまい」などということを小学校低学年でも平気に口にしています。
このように脂味を感じるのは、幼いときから脂肪が多く含まれているものを食べていて、脂肪に敏感に反応するようになっているからです。子供は糖質をエネルギーとして効果的に使う能力が高いのですが、脂質(脂肪)をエネルギー化する能力は高くはないものです。ところが、幼いときから親が脂肪の多い食事をしているために、その味に慣らされてきたせいなのか、和菓子よりも洋菓子を食べているせいなのか、脂肪が多く含まれているものをおいしく感じています。
大人にとっては、脂肪はおいしいものです。同じ重量であっても脂肪はエネルギー量が高く、おいしく感じることで多くのエネルギー量が摂れるようになっています。いつ、どんなものが食べられるかわからない状態が歴史的に長く続いたことから、エネルギー源が摂れるときに、どんどん摂っておくことができるように自然に身につけられたメカニズムと言えます。
この大人のメカニズムを子供も身につけたことから丈夫に、そして元気になることはできるのでしょうが、その代わりに若いうちから太ってしまう子供も増え、生活習慣病になる時期も早くなるというマイナス面も起こるようになっています。
多彩な味覚を身につけることは必ずしもよいことばかりではない、という話です。