「医者の不養生」というのは昔も今も言われ続けてきたことで、人に養生をすすめる医者が自分自身は健康に注意していない、健康維持のための生活指導をする立場でありながら自分では実行していないことを指しています。
不養生をしていても、専門家であることから加減を知っていて、実は長生きであるということなら「医者の不養生」は当たっていないことになるのですが、それを確かめるには医師の平均寿命を調べるのが一番です。
厚生労働省による平均寿命のデータは、それぞれの業界についても調べられていますが、医師の平均寿命については見当たりません。そこで参考データとして使われているのは岐阜県保険医協会による開業医の平均寿命で、それは70.8歳という結果です。
日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女が87.57歳で、男性に当てはめても10年以上も短命という結果です。年代別で見ると60歳代が最も多くて、34.1%を占めています。開業医の平均年齢は60.2歳(2022年)との報告もあり、平均年齢の医師に診てもらえるのは、これも平均であっても10年ほどということになります。
平均寿命は生まれたばかりの子ども(0歳)が何歳まで生きられるかの推測値で、正式名称は「平均余命」と言います。日本人の死亡時平均年齢(2021年)は男性が85歳、女性が92歳で、これは何歳で亡くなった人が最も多かったのかを示しています。
65歳の人の平均余命は、男性が19.44年なので84.44歳、女性が24.73年なので89.73歳となります。これと比べても医師の平均寿命は短すぎます。
そのことをもって「短命の人の健康指導など信じられない」と言う人もいますが、医師の平均寿命と健康状態を考えると、医師に頼りきりになるのではなく、自分で健康づくりに取り組むことの重要性に気づくことができるデータとなります。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕