忘れる脳力3 なぜ習慣化すると忘れてしまうのか?

重要なことであるはずなのに、ドアの鍵の閉め忘れ、電気やガスの消し忘れ、定期券や携帯電話の持ち忘れといったことが起こるのは、脳の記憶の容量が関係しています。

五感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)で受けた刺激は、すべて脳に送られるのですが、それらをすべて記憶すると脳の限界を簡単に超えてしまいます。そのため、五感の感覚器官から送られてきた情報は一瞬だけ記憶して、覚えておく必要がない情報は一瞬にして忘れ去る仕組みがあります。

その保持時間は0.1秒から長くて2秒程度だとされています。

五感の情報量は1秒間に200万ビットだと考えられています。200万ビットというと文字情報だと書籍1冊分に相当していて、400字原稿用紙で300枚、12万字に相当する量です。

そのうち1秒間に脳で処理できるのは126〜134ビットで、なんと0.01%でしかありません。これは文字数にすると12字です。それ以外のほとんどの情報は受け流されています。

記憶できる情報量に限界があるので、重要性が低い情報は記憶に残りにくくなっています。大事なことであったとしても習慣化して、慣れが生じてくると、重要度が低いものとして認識されるようになります。

重要度が高いことを習慣として実施しているうちに、重要度が変わって、粗末に扱うようになる人も少なからず存在していますが、そのような人は付き合いにくく、トラブルを起こしやすい人と言えます。

それと同じようなことが記憶でも起こっていて、習慣的に行っていることを本人が強く意識して実施しないと記憶ができず、忘れ去ることにもなります。それどころか“忘れたことを忘れる”ということにもなりかねないのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕