健康情報8 短鎖脂肪酸の抗アレルギー作用

東京理科大学先進工学部生命システム工学科の研究グループは、短鎖脂肪酸が示すアレルギー抑制作用について、マウス・細胞・遺伝子レベルの解析を組み合わせることによって、詳細な作用機構の解明に成功したと発表しました。

短鎖脂肪酸は、主に食物繊維が腸内細菌によって代謝される際に生成される物質で、酪酸、吉草酸、プロピオン酸、酢酸などの総称の用語として使われています。

短鎖脂肪酸には、免疫細胞であるマスト細胞の働きを調節して、アレルギー反応を抑制する機能があることは明らかにされています。ところが、短鎖脂肪酸がマスト細胞に作用する分子機能については解明されていませんでした。

マスト細胞は、主にアレルギー反応やアナフィラキシーに関与する免疫細胞で、マスト細胞の表面にはIgE抗体の受容体が発現しています。この受容体にIgE抗体が結合するとマスト細胞が活性化されて、ヒスタミンなどのアレルギー誘因物質が細胞外に大量に放出されて、アレルギー反応が引き起こされています。

今回の研究では、短鎖脂肪酸を経口投与したマウスでは、アナフィラキシー(強いアレルギー反応)が有意に改善されることが明らかにされました。また、短期脂肪酸とともに培養したマスト細胞では、IgE抗体によって誘導される活性化が有意に抑制されることも明らかにされました。

さらに各種阻害剤や遺伝子技術を用いた解析から、短鎖脂肪酸によるマスト細胞活性化抑制に関与する2つの経路であるGタンパク質共役型受容体GPR109Aを介する経路と、免疫関連遺伝子のエピジェネティックな発現調節を介する経路が見出されたと報告されています。

短鎖脂肪酸(酪酸、吉草酸)を4〜6日間、経口投与したマウスでは、アナフィラキシーが有意に抑制されることがわかりました。また、受動的皮膚アナフィラキシーモデル(足底の皮膚にアナフィラキシーを誘導するもの)を用いた場合にも、短鎖脂肪酸の経口投与によってアナフィラキシーが抑制されていました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕