何をもって健康の評価をすべきか

健康づくりに役立つ食品や運動の効果の評価というと、血圧が下がった、血糖値が下がったという目で見てわかるものが注目されがちです。検査数値を示されて、診断基準を超えているから動脈硬化のリスクが高い、心臓病の危険性が高いということを言われても、その受け手(患者や受診者)にしてみれば、単なる数字を示されて、高いからダメ、低いからセーフとなることの意味を理解して、リスクを減らすように食事や運動、生活を改善しろと言われても、それは受け入れ難いことです。とはいえ、数値が示されているので、改善する目安になり、それを目指してアクティブに動きやすくなることは確かです。
例えば、機能性表示食品を摂ることによって、高血圧の人の血圧が下がり、基準値を下回ることはなかったとしても、基準値に向かって下がっていたら、それは評価の対象となります。もちろん、数値が動けがよいというものではなく、効果ありと認められるためには、一定の割合の変化は必要です。機能性表示食品の場合には、有意と認められる範囲が定められていて、それを超える変化でなければ効果ありと認められないのは当然のことです。数値が下がったとしても、これはリスクが低下しただけで、“病気が治った”とか“健康になった”という結果を示すことではありません。
血圧や血糖値が基準値よりも高まると、「病気になった」と考え、基準値よりも下回ったら「治った」と考える人が出るのは当然のことかと思われますが、血圧が基準値を超えたら今日から病気、下回ったら今日から治ったという単純なことではありません。
病気の定義については、このコーナーで何度か紹介してきましたが、血圧が高まったからといって、すぐに身体に異常が出るわけではなく、その先にある動脈硬化、血栓、心筋梗塞、脳梗塞などが起こるわけではありません。逆に言うと、血圧が基準値以下に下がっても、動脈硬化や脳梗塞などのリスクが下がったということは、なかなか実感できることではなく、改善のために効果があることを続けようという気持ちにもなりにくいものです。
こういった個人としての変化もさることながら、本当に食品や運動の効果があったのかは、集団的に見て見ないと判断がつきにくいことがあります。個人の場合は、どうしても個別の食事内容や生活での出来事に影響されやすく、気分的なものまで影響してきます。集団でとらえた場合も数値が注目されがちで、全体としてみたときに平均して、どれくらいの数値が下がったかが言われますが、平均ほどわかりにくいものがなく、中には「平均の人を探したけれど会えなかった」ということもあります。
そこで採用されているのが、集団としての医療費の変動です。集団で食事の内容を見直したら、一定の運動を取り入れたら医療費が全体的に下がる傾向を示したら、これは効果があったことで、医療費の一部を負担する個人だけでなく、残りを負担する自治体や健康保険組合も強く関心を示しているところです。これもあって医療費の削減は健康づくりに効果があったとの評価に使われているのです。