高齢者の歩行速度に関わる下肢機能として、足関節底屈機能の重要性が多数報告されています。これまで足関節底屈の筋力(強い力を出す能力)だけでなく、運動速度(素早く動かす能力)も歩行にとって重要であることが報告されてきましたが、足関節底屈運動速度の基礎的な特性については明らかにされていませんでした。
底屈運動速度が加齢に伴って、どのように変化するのか、また男女間で機能が異なるのかなどの機能特性を明らかにする研究が大阪公立大学大学院の研究グループによって実施されました。
対象となったのは、18〜91歳までの健常成人550名で、足関節底屈運動速度と足関節底屈筋力の計測が行われました。対象者を若年群(18〜39歳)、中年群(40〜64歳)、前期高齢群(65〜74歳)、後期高齢群(75歳以上)の4つの年代グループと男女2つのグループに分類して、各機能の加齢変化と性差について検討されました。
その結果、底屈運動速度は若年群から後期高齢群にかけて約26%低下し、底屈筋力と同様の加齢変化を示すことが明らかとなりました。一方で、性差に関して底屈運動速度の男女間での差は1%未満であり、底屈筋力とは異なる特徴を示しました。
さらに、底屈運動速度に対する底屈筋力の寄与率が16%と小さな値を示したことから、運動速度は筋力に依存しない独自の性質を持つ機能であることが明らかにされました。
底屈筋力は加齢とともに減少することに加え、男女間でも差があることから、筋力と運動速度は別の指標として考える必要があり、高齢者の歩行機能を向上させるためのリハビリテーションにおいて、筋力とは異なる戦略で運動速度のトレーニングを行う必要性を示しています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕