健康情報47 高カカオチョコレートの摂取と認知機能

カカオポリフェノールを含む食品が認知機能に及ぼす影響を示す論文は国内外で数多く報告されていますが、間食として適切な用量のチョコレートで認知機能の維持について報告した事例はほとんどありませんでした。

明治と理化学研究所生命機能科学研究センターの共同研究グループは、人間を対象とした2つの研究を行い、高カカオチョコレートの摂取が集中力を維持して、連続的な認知課題時における認知機能のパフォーマンスの低下を抑制したこと、脳の認知資源の効率的利用に寄与したことを明らかにしました。

脳の認知資源という考え方が注目されており、認知資源の消費は仕事や学習のパフォーマンスに影響を与えると考えられています。

行動評価については、20歳以上50歳未満の日本人男女22名を対象に、カカオポリフェノールの濃度の異なる2種類のチョコレート(高カカオチョコレート:総ポリフェノール量635mg、低カカオチョコレート:総ポリフェノール量212mg)を各25g摂取した後に試験が実施されました。

高い認知的要求(反応抑制、選択的注意)を必要とするストループ課題のセッションが2回実施され、試験食品摂取前とセッション2回目終了後に自律神経機能と主観評価を測定し、疲労や集中力などの状態が評価されました。

ストループ課題は、実行機能を計測するための認知課題で、2つの相反的な要素を含む刺激に対して、誤った指示に反応せず(反応抑制)、正しい選択肢に注意を向ける(選択的注意)課題を指しています。

ストループ課題の正答率は、低カカオチョコレートを摂取したときにはセッション2回目で有意に低下しましたが、高カカオチョコレートを摂取した時はセッション1回目と2回目で有意な変化はありませんでした。

また、主観的な集中力も低カカオチョコレートを摂取したときにセッション2回目の終了後に有意に低下しましたが、高カカオチョコレートを摂取したときは、チョコレート摂取前とセッション2回目終了後で有意な変化はありませんでした。

脳活動解析については、30歳以上50歳未満の日本人男女33名を対象に、カカオポリフェノールの濃度の異なる2種類のチョコレートを各25g摂取した後に、脳活動を連続的に計測しながら、かなり強い認知的要求を必要とするストループ課題のセッションが2回実施され、試験食品摂取前とセッション2回目終了後に自律神経機能と主観評価を測定し、疲労や集中力などの状態が評価されました。

機能的MRIで撮像した脳活動解析によって、認知課題遂行中の脳活動で有意な交互作用を認めた領域として、脳の注意機能に関係する背外側前頭前野と下頭頂小葉が見出されました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕