鶴の恩返しのように身を削ってでも受けた恩を返すまでのことはしないとしても、恩は返すべきものという認識があります。恩を返す相手は、恩を受けた人になるわけですが、恩を受けた人に対してではなくて、別の人に恩を渡していくという選択があります。
それは「恩送り」で、いわば“恩のバトンタッチ”です。恩の価値は、これくらいのことをしたと思っている送った側と、受けたほうでは感覚が違っていることが多くて、受けた側が大したことがないことであると感じていたら、そもそも恩だとは思っていないこともあります。
そんな状態では、恩を返すことも、恩を送ることもできなくなります。同じモノサシで測れるものであれば、例として示すことは簡単かもしれません。そんなわかりやすい例としてあげられるのは“無料券のバトンタッチ”です。
空腹なのに食べるための手持ちがないときに、食堂の壁に無料券が貼ってあって、それを目にして食堂に入れば、1食を食べることができます。このことに感謝をして、お礼を言って店を出るだけでは恩は受けっぱなしで、これはONではなくてOFFの状態です。
その食堂の前を次に通りかかったときには、以前に食べたものよりも高いものが食べられる懐具合であったときに、他の店に入るのではなくて、その食堂に入って自分の分を注文して、会計のときに前に食べたものの料金も支払います。
これが恩送りで、これによってONをONで返すことができるので、“ONを送る”ことになります。
これは食堂や食べ物、受けた恩と同じ恩を返すというだけでなく、他のところでも他のことでもできることです。この恩を恩で返す、ONをONで返すということは相手がいればこそで、相手がいないことには成り立ちません。
「ONをONで返す」ためには、返せる相手がいる世界で過ごすことが必要で、それなしには「ONをOFFで返す」ようなことになりかねないのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕