“ストレス太り”という言葉があります。一般には、ストレスが高まると、それを解消するために多くの量を食べるようになる、脳の栄養になる糖分を摂るようになって太ることを指しています。これは当然のように起こることですが、メディカルダイエット的には、もう一つの理由があります。それはストレスによって筋肉が減り、脂肪が増える仕組みが私たちの身体の中にあることです。
ストレスは、本来は危機的な状態で起こるものであって、その危機的状況から逃れるために自律神経の交感神経の働きを急激に高めて、身体の変化を起こしています。何が起こるかというと、血圧が上がり、血管が収縮して、呼吸数が高まります。逃れるためにはエネルギーが必要となることから、すぐにエネルギーとして使われるブドウ糖を血液中に多く放出します。放出しているのは筋肉で、筋肉の中にはブドウ糖が結合したグリコーゲンの形で保存されています。このグリコーゲンの結合を解くことで、ブドウ糖が血液中に増え、これがエネルギーとして使われるわけです。
交感神経にはグリコーゲンの分解を解く作用があり、ストレスが高まるほど血液中のブドウ糖が増えていきます。肉体的なストレスなら増えたブドウ糖を使って走って逃げるということもするわけで、ブドウ糖が多くなりすぎることはありません。しかし、精神的なストレスでは増えた分のブドウ糖を使うことはできません。脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖で、全身の消費エネルギー量のうち20%ほどは脳が使っています。だから頭を使いすぎると脳がエネルギー不足になり、甘いものへの欲求が高まるわけです。脳は全身の2%ほどの重量しかないので、相当にエネルギーを使っているといっても、全体でいえば20%なので、フル回転させたとしてもストレスによって増えすぎたブドウ糖を使い切るわけではありません。
そのために、精神的なストレスで増えすぎたブドウ糖は余分なものとして、蓄積されるエネルギーとして肝臓で脂肪に合成されます。その脂肪は体脂肪として蓄積されるので、強いストレスを感じた結果として体脂肪が増えることになるのです。
ストレスによって筋肉が減り、脂肪が増えるのが“精神的ストレス太り”ということになるわけですが、スポーツをする人や年齢を重ねることによって筋肉が減る傾向がある人には、なんとかしたい身体のメカニズムです。そこでメカニズムを知って、どんな対策をすべきかということですが、ストレスが強いときには、筋肉を刺激する運動をする機会を増やすことです。運動によってストレスを解消しようというのが一つの理由ですが、筋肉運動をしてから食事をすると肝臓でブドウ糖がグリコーゲンに合成されやすくなります。合成されたグリコーゲンの一部は肝臓にも蓄積されますが、筋肉にも蓄積されるので、筋肉から出て行った分を補うためには食事の前の筋肉運動が有効になります。