健康情報51 肥満度と脳梗塞、脳内出血、脳卒中発症リスクとの関係

国立がん研究センターのがん対策研究所・予防関連プロジェクトは、生活習慣病と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにして、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。

平成2年(1990年)と平成5年(1995年)に9保健所(岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県中部、沖縄県宮古)管内に在住の40〜69歳の男女約9万人を平成23年(2011年)まで追跡した調査結果に基づいて、肥満度と脳卒中の発症リスク、その病型の脳梗塞、脳内出血の発症リスクとの関連を検討して発表しました。

脳卒中は脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血の3つの病型に分けられますが、脳梗塞と脳内出血が脳卒中発症数の大部分を占めています。肥満度が高いほど脳梗塞の発症リスクが高くなる関連は多くの研究で認められていますが、肥満度と脳内出血発症との関連性は研究間でも必ずしも一致していません。

その可能性として、研究対象者の年齢や追跡期間中の体重(BMI)の変化が結果に影響する可能性が想定されました。そこで、肥満度が測定された年齢を40〜59歳、60歳以上に分け、さらに調査開始時、5年後、10年後の情報を用いてBMIと脳内出血、さらに脳梗塞、脳卒中全体との関連が調べられました。

約19年の追跡期間中、8万8754人の対象者から4690人の脳卒中発症(脳梗塞2781人、脳内出血1358人)が確認されました。60歳以上の集団の脳梗塞の発症率はBMIが30以上のグループで最も高く(4.37)、BMIが18.5未満のグループで最も低かった(2.42)ものの、その値は40〜59歳の集団で脳梗塞の発症率が最も高かったBMIが30以上のグループ(1.73)より高率でした。

同様に、脳内出血においても、BMIのグループによらず、年齢層が60歳以上の集団の発症率が40〜59歳の集団の発症率より高い傾向が認められました。

脳梗塞発症リスクについては、40〜59歳の集団と60歳以上の集団の、いずれにおいてもBMIが高いグループほど脳梗塞発症リスクが高いという正の直線的な関連が認められました。

一方、脳内出血の発症リスクについては脳梗塞とはやや異なり、40〜59歳の集団と60歳以上の集団の、いずれにおいても肥満度の高い集団だけでなく、やせ(BMIが18.5未満)においてもリスクの上昇傾向を認め、BMIと発症リスクの関連がU字型の傾向を示すことが観察されました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕